人口流出が加速する自治体では「子育て支援」に注力することで、移住者を増やす取り組みが増えています。別府市の人口も、2040年には10万人、2060年には8万人を切ると言われており、打開策が求められています。
これまで「福祉活動」として様々な子育て支援を行ってきた中村さんですが、別府市議会議員選挙に出馬を決意し、「政治活動」としても子育てしやすい街づくりに取り組もうとしています。
そこで今回は、中村さんが「福祉と政治」の両輪で行う子育て支援の必要性や、選挙に当選した際に成し遂げたい目標についてのインタビューをお届けします。

カクシン編集部の林です!僕が聞きました!
別府市を「子育てしやすい街」にするために市議会議員選挙へ出馬を決意

今度、別府市議会議員選挙に出馬されるとお聞きしたのですが、どんな思いで決意しましたか?
別府市をもっと「子育てしやすい街」にしたいんです。
別府市を今以上に保護者や子どもたちに優しい街にしたいと思っていますが、それ以上に別府市にとっても、子育て支援は重要な「経済政策」にもなると考えています。
別府市が子育て支援に力を入れると、別の市から「子育てをしている働く世代の家族」が移住してくるという流れが生まれます。
それによって税収が増えて、別府市が潤うという、経済的好循環に繋がります。
そういった街づくりが一つの理想と考えてます。
別府市は温泉や観光など、街として魅力的なので、子育て支援制度さえ整えられれば、移住者も増えそうですね。
別府市の人口は、2040年には10万人、2060年には8万人を切ると言われています。
主に生産年齢人口(15歳から65歳までの人口)が減り、それに伴い税収も少なくなります。
そうすると、高齢者支援・子育て支援ができなくなり、さらに少子化が進み人口流出が増えるという「負のサイクル」に陥ってしまう恐れがあります。
なので、いかに働く世代の移住者を増やせるかというところが鍵となってきます。
別府市にもっと「子どもを産みたい」と思える制度を充実させたい

ベンチマークにしている市などありますか?
兵庫県の明石市です。
明石市は、子育て支援を前面に打ち出して、移住者を多く獲得しています。
子育てが終わった世代からは、反対意見もあったらしいのですが、結果的に移住者が増え、商店街など町が潤い、プラスの好循環が生まれた事例です。
明石市に引っ越して、東京の仕事をリモートワークで行なっている人もいる、という話も聞いたことがあります。
そのためには、今やるべきだと思っているのです。
他の町が子育て支援を打ち出す前に、別府市が前に出ることで、目立たせて、注目を浴びる必要があります。
今、別府市に足りないものは、なんだと思いますか?
産後ケア制度の積極的な活用、2〜3人目の子どもを産みたいと思える制度など、細かい環境づくりが不十分だと思います。
子育てしやすい町にするためには、出産した人が得する環境が必要ですよね。
子育て、店舗経営の合間で政治家になる勉強を開始

ゼロから政治家を目指すと決めて、最初にどんなことをしたんですか?
政治活動をしていくに当たって、まず東京にある「一新塾」というNPO法人の立ち上げ、政治家の政策立案を学ぶ学校に通いました。
政治家というのは「まず政治家になることが大切だ」という考え方が通例です。
挨拶に行ったり、顔を繋いだりと、選挙で票を取ることを優先し、政治に関する勉強は当選後にすれば良い、という考え方が一般的です。
ですが、この考え方には違和感を感じました。
それはなぜですか?
市議会議員選挙に当選したら議員としての報酬を頂けることになります。
そこで、政治に関するルールや仕組みを知らない状態にもかかわらず、税金から生み出された報酬を頂くことが誠実ではないと感じました。
当選した時点ですぐに政治に参加できる状態であるべきだと考え、先に学校に通うことにしたんです。
美容院を経営されながら、子育てをしながら、その上で政治の勉強をするのは大変でしたよね?
大変でしたね(笑)
当時は、それとは別に政治塾にも通いましたし、夜中にマクドナルドに行って、朝まで勉強するのが日課でした。
PTAや学童保育・子ども食堂などを平行して行いながらだと、なかなか勉強の時間を取るのに苦労しました。
それは大変ですね(笑)
「福祉」と「政治」の両輪で子育て支援に取り組む必要性

その当時の1日のスケジュールは、どんな流れでしたか?
まず深夜3:00に起床して、そこから6:00までマクドナルドで勉強。
そのあとに、子どもを起こして朝の支度をさせて学校へ送り出し、日中は美容院の仕事をしつつ、空き時間にPTAの作業や集まりに行っていました。
仕事と勉強を両立させるだけでもすごいと思いますが、子育てや子ども食堂を同時並行で行っているのがすごいですね。
私が勉強や仕事や福祉活動に専念できるのも、全ては家族の支えや理解があってこそだと思います。
また、子育て支援制度をより実情に沿ったものにする為には実体験が必要です。
なので、家事だけでなく、子どもと触れ合う時間も大切にしてきました。
そうなると、政治の勉強をする時間は、子どもが寝ている時間しかないので、数年はこのようなスケジュール感で生活していました。
なぜそこまで頑張れるんですか?
政治の世界は、自分でなりたいと思って立候補する人より、周りから担がれてなってください、と言われる人が選ばれやすい傾向にあります。
つまり、私のように自分から立候補する人にとっては茨の道なのです。
ですが、自分で家事・子育てをしつつ福祉の現場でやっている自分だからこそ、別府市の政治に参加することで、成し遂げられることがあると思っています。
別府市議会議員に立候補しようと思ったきっかけは何ですか?
子ども食堂やPTA等で、たくさんの保護者の方々とお話をしている中で、今の家庭での悩みなどを聞く機会が増え、どうにか解決に向けて力になれないか、と考えるようになりました。
福祉活動を通して、貢献していくことも大切ではありますが、スピード感や出来ることが限られています。
政治家になることができれば、そもそものルールや仕組みを作ることができるため、「政治家として基盤を作ること」と「福祉活動」という両軸での貢献が必要だと考えました。
中村さんが考える「子育てしやすい街づくり」とは

中村さんが別府市議会議員に当選したら、どんな活動方針を考えていますか?
「子育てしやすい街づくり」を基本ベースとしています。
このままのスピード感で少子化が進めば生産年齢人口は減り、市全体としての経済活動は停滞し、街に活気がなくなってしまいます。
そうなると市の税収も減っていきます。
しかし何をするにも、市に税収は必要です。そのために、子育て支援をしていくことが絶対に必要だと思っています。
具体的に取り組む内容も決まっていますか?
まず最初に「産後ケア」を広めていきたいと考えています。
産後ケアは、生後1歳までの赤ちゃんと、お母さんが利用できる制度です。
赤ちゃんに関する悩みを助産師さんに気軽に相談できたり、お母さんがリラックスできる場所やサービスを提供する制度です。
そのようなサービスは現状ないんですか?
「乳幼児健診制度」はありますが、あくまで健診なのでお母さんをケアする制度ではありません。
出産後のお母さんは、入院中は子育てに関する疑問点があれば、都度教えてもらえますが、退院後は頼れるものがなくなってしまいます。
それがきっかけで、産後鬱になるお母さんも近年増えているので、産後の影響が特に大きい産後12ヶ月までのお母さんをより手厚くサポートする産後ケアをもっと誰でも使いやすいようにしたいと考えています。
出産前後のお母さんが「きつい」と言いやすくて頼れる環境を整えたい

今はどんな方が産後ケアを利用しているんですか?
実際には、この制度を利用できる人は全員ではなく、養育に不安がある方、家庭で十分な支援が得られない方、精神的に不安定な方など、トラブルが起きている状況にある方だけとなっております。
そのため、全てのお母さんが使える制度にしたいと、私は考えております。
トラブルが起きていないと使えないと、辛くても我慢しているお母さんが救われないですね。
出産は命がけなのです。大手術なのです。
平気な人がいるはずがなく、母子手帳を取りに行くことすら辛い、という人もいます。
そういった制度を使うことができるようになれば、産後鬱の方も減り、子どもに余裕を持って接することができると考えています。
そして、2人目、3人目を産もうと考える人も増えると思います。
すでに子育てに関する制度はあるものの、もっと使いやすく変える必要があるんですね。
現状、産後ケア事業は母子保健法という法律の中で市区町村の「努力義務」になっています。
ですが、やはり自治体によって温度差があるため、別府市では産後ケアが使えるように、どんどん推進していきたいと考えています。
別府市でも制度としてはありますが、自治体から様子を聞かれても、大丈夫ですと答えるお母さんが多いです。
素直に「きついです」とは言いづらいですよね。
ですが、少子化の今、優先的に制度を使えるようにしないと、おかしいと思います。
唯一の現役の「子育て世代議員」として別府市を変えたい

次のステップとして、考えられていることはありますか?
子育て支援は、生まれたばかりの乳幼児、小学生の子どもなど、様々な段階がありますので、同時進行で進めるべきだと考えています。
小学生に関しては「児童クラブ」をさらに充実させるべきだと思います。
学校内では「少人数学級」がもっと根づけば良いと考えています。
少人数学級とはなんですか?
少人数学級とは、1クラスあたりの児童数が30人未満など、1人の先生が担任する子どもの数を減らすことです。
1人で何十人もの児童を見るのは大変ですよね。
そういった状況もあってか、学校の先生になりたいという人も減ってきています。
発想を変えて、発達ケアの専門家を学校現場に先生として招いて、別の視点からも学校や子ども達を見てもらうのも良いですよね。
あとは、DV被害者へも細かく支援すべきだと考えています。
今後の展望をお聞かせください。
スバリ「当選」することです!
4年間、やれることは全てやってきたつもりですので、結果を出していきたいと思います。
当選しないと何も始まらないため、子育てや福祉の現場にいる自分だからこその経験を、政治に生かしていきたいと考えております。
現状の別府市の市議会議員に、小学生以下のお子さんをお持ちの方がいません。
だからこそ、私が当選して、子育て世代のリアルな声を政治の場へと反映したいと思います。
〈取材・執筆=林 勇士〉
中村さんは別府市市議会議員に挑戦します!
今回インタビューにご協力いただいた中村さんは、2023年4月23日が投票日の「別府市市議会議員選挙」に出馬されます。
今の別府市には、現役で子育てをしている議員がいない。だからこそ、自分が議員になって、別府市を「子育てがしやすい街」にするんだと、お話しされていました。
最近は「自分1人が選挙に行っても世の中は変わらない」と諦めている方が増えているようですが、選挙をきっかけに「どんな街だと自分や家族が住みやすい?」と考えてみてはいかがでしょうか?
まずは「無関心」から「考えてみる」というアクションに変えることから始めてみませんか?
