インタビュー記事

【核心】宮脇 卓也|大企業を経験して得た「組織改革」と「人材育成」を成功に導くスキル(後編)

厚生労働省の調査(※1)によると日本人の終身平均転職回数は、1.5〜1.8回程度とされています。マイナビが採用担当者向けに調査(※2)を行った結果では、3回以上の転職を経験した人が面接に来た際には、「なぜそんなに転職を繰り返すのか」と疑問に思うようです。

実際に何度か転職をしたは経験のある方は、「飽きやすい」「忍耐がない」「不平不満の持ち主」などのネガティブな印象を持たれたという方もいるかもしれません。

しかし、大企業を中心に7回の転職を経験し、その転職で得た経験やスキルを自身の最大の強みに変換して、多くの業界で成果を出し続けているのが宮脇さんです。

どの企業でどんな経験をして、その経験が今どのように生きているのか?という宮脇さんの「核心」に迫るインタビューをお届けします。

※1:平成26年版労働経済の分析 - 職業生涯を通じたキャリア形成 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/14/14-1.html

※2:転職回数が多いという事実だけで転職が不利になることはない(マイナビクリエイター)https://mynavi-creator.jp/knowhow/article/the-number-of-job-change

【宮脇 卓也(みやわき たくや)】インベステップ代表/合同会社リ・ボーン賃金向上達成指導員/鉄輪本舗 専務 (プロジェクトリーダー)。1969年生まれ、東京都荒川区出身。中央大学経済学部を卒業後、「リクルートコスモス」「安比高原リゾート」「日本トイザらス」「スポーツクラブ・ルネサンス」「ロッテリア」「すかいらーく」を経験。大分市内のビジネスリゾートホテルのサービスマンとして平社員で入社し、2年で店長、4年で副支配人・5年で支配人となる。2018年7月に「インベステップ」を立ち上げ、個人事業や中・小規模企業の経営プロデュースやブランドコーディネートを行う。

カクシン編集部の林です!僕が聞きました!

大手ファミレスチェーンで十数店の「不採算店の立て直し」を経験

宮脇さんが「組織改革」や「人材育成」で成果を出せるのは、大手ファミレスチェーンでの経験が直結していますか?

大手ファミレスチェーンでの経験が一番だと思います。
 
約20店舗近くマネジメントさせていただきましたけど、後半は「不採算店の立て直し」のマネジメントでした。
 
私がいたファミレスチェーンは全国に1,000店舗以上あったので、それだけあれば色々と問題だらけの店舗もあるんです。

どのように問題だらけの店舗の立て直しを行いましたか?

問題点が複数ある店舗を立て直す場合は、1つでも自信を持てるポイントを作ることから始めます。
 
例えば、来店数は少ないままでも良いからと、フロアからキッチン、外観まで常にピカピカに掃除して、花壇にきれいな花を植えた店舗もありました。
 
汗だくになりながら掃除をした社員や従業員は、その点をお客様に褒めてもらえると嬉しいじゃないですか? 1点でもプラスのポイントができると「じゃあ次はどこを改善しようか?」と社員の方から提案が出てくるようになります。

その店舗の一番の課題が「店舗が汚い」ことだったから掃除に注力したんですか?

その店舗の場合は、課題が多すぎて掃除くらいしかすぐに着手できることがありませんでした。
 
でも、せっかく店舗が常にピカピカなのであれば、制服もきれいにしたいと思うようになります。店舗と制服がきれいなら、料理もきれいに盛り付けして、焼き加減も完璧な状態で提供したいと思うようになります。
 
1つの課題解決が良い効果を連鎖的に起こすことに繋がる
んです。

ホテルの立て直しに成功した背景には、ファミレスチェーンの十数店舗を立て直しをした経験が大きいんですね。

そうですね。店舗立て直しは、半年とか短い時で2ヶ月とかで次の店舗に行かされたりもしました。

そんな短期間で成果が出せるのはすごいですね。

その店舗が抱える課題のコアを見つけることが大切です。掃除や料理、接客、提供スピードなどそれぞれの店舗が抱える課題が異なります

働く環境を良くしたいなら「自分から動く」しかない

宮脇さんが「課題のコアを見つけて解決」できるようになったのはなぜだと思いますか?

過去に何社も転職してきたことが背景にあるのかもしれません。
 
一番最初はリクルートに入社して、次に岩手県で安比高原スキー場(あっぴこうげんスキーじょう)を運営するリクルートグループ企業の岩手ホテルアンドリゾートに転籍しました。そして、トイザらスに転職して、その次に、すかいらーくに転職しました。

すごい経歴ですね。

会社を何社も変えて実感したのが「自分にとって都合の良い会社なんてない」ということです。
 
入社前は居心地が良さそうな会社でも、途中から居心地が悪くなる場合もあるじゃないですか。
 
自分が働く環境を良くするには、自分から動くしかないんですよ。

1人の社員のためだけに会社は変えられないですもんね。

この会社のここが悪いとか、上司が悪いとか、自分のことを棚に上げて周りのせいにしても何も変わりません

宮脇さんご自身が楽しく働く環境を整えようと行動して、環境を変えることを複数の会社で実践したことが、組織改革や人材育成のスキルに繋がっているんですね。

そうですね。
 
転職を7社も経験した人が採用面接に行った際には、どうしてこんなに転職したんですか?と疑問を抱かれることが一般的かもしれません。
 
でも、欧米では、自分のスキルアップやキャリアアップのために、転職することは一般的なことです。7回の転職も珍しくありません。

ネガティブに捉えられていた「転職」を「最大の強み」に変換

日本では転職した数が多いことはネガティブに捉えられることもありますもんね。

特に我々の時代は、転職すると「忍耐力がない」「我慢強さがない」とネガティブにしか受け止めてもらえなかったのできつかったです。
 
しかし、転職した経験を絶対にいつか成果に繋げると心の中で強く思っていました
 
だって、色々な業種で7社も経験したので、様々な業種の成功事例も課題もたくさん見てきました。この経験が今の仕事に生きていると思っています。

色々な業種で、多種多様な人たちと働きながら、多くの課題を乗り越えてきた経験があるので、インベステップを創業してからも色々な業種の方々から相談を受けても的確なサポートができるようになったということですね。

 「僕、こんな会社に居たんですけど」と実体験を織り交ぜつつ、クライアントの課題に向き合えるので、色々な企業を経験してきて良かったと今では思えます。
 
今の状態になるまでは、決して全てが幸せな転職だったわけではありません。

でも、いつかこの経験を活かす時が来るだろうと思い、その時その時にできることを一生懸命やってきました。

居心地の良い職場だと離れるのは嫌ですもんね。

課題だらけの状況を立て直しをした店舗から離れるのは本当に嫌でした。「店長ありがとう!」と書かれた寄せ書きをもらうと、他の店舗には行きたくないですよね。
 
社員と従業員が一丸となって良い雰囲気の店舗になったから、しばらく居させてほしいといつも思っていました。でも、また他の課題だらけの店舗に移動させられるんです。
 
それでも自分がやってきたことを振り返って、自分が残した足跡があると思うと次も頑張ろうと思えました

座右の銘はリクルートの社訓「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変える」

リクルート時代のエピソードもお聞きしたいです!

リクルート時代の私の師匠は、岩手県にある安比高原スキー場にいたある部長さんです。
 
当時の私は安比高原スキー場の和食レストランで働いていたのですが、その部長の指示で商品開発部門に移動しました。
 
そこで、転籍後はその部長に直接ご指導いただき、色々なことを任せていただきました。
 
中には無理難題とも思えることも多く、その中でも特に印象に残っているのはスキー場で「朝市」を企画したことです。

スキー場で朝市は聞いたことがないです!

安比高原スキー場は、当然ながら海沿いではなく山の中に立地しています。その山の中に海産物を持って来るように言われました
 
仕入れる海産物の種類を決めて、漁港の卸屋さんに商談に行って、スキー場に納品していただく段取りを私1人に任せていただきました。
 
最初は無理難題だと思ったんですが、なんとか工夫して成し遂げることができたと報告すると、その部長が「ほらできただろ?じゃあ次はこれをやってみろ!」と、またしても無理難題に思える新たな業務を与えてくださいました。

その教育スタイルが「リクルート流」なんですね。

そうです。
 
リクルートの創業者である江副浩正氏は「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変える」という社訓を創業時に掲げました。
 
私にとっては、今でもこの言葉が座右の銘になっています。
 
独立した今でも何か新しいことに挑戦する時には、心のどこかに「やりたくないな」「苦手だな」と感じることはあります。

宮脇さんでもそういうことがあるんですね。

しかし、そのような時には、自分の中にこの言葉を放り投げて、自分の力で機会を作れよ!と奮い立たせるんです。
 
リクルートを退職してから30年ほど経ちましたが、今でも一番大事にしている言葉は「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変える」です。

努力が結果に結びついた喜びは「プラスの連鎖」を生む

今やられている鉄輪本舗ではどのような事業を行っていますか?

私がサポートに入っている「鉄輪本舗」は多機能型就労継続支援事業所で、障がいのある方々と一緒に野菜や果物を栽培したり、鉄輪温泉を活用してフルーツビネガーやドライフルーツ、梅干しの加工品の製造販売を行っています。
 
鉄輪本舗では、就労継続支援事業所だから買ってもらえるというのではなく、他の民間の企業と肩を並べても魅力的だと思ってもらえるように、味やデザインにこだわっています

どのような想いで鉄輪本舗のサポートをされていますか?

鉄輪本舗では「障がいのある方々がする仕事の価値を上げたい」という想いで、メンバー全員で取り組んでいます。
 
障がいの有無にかかわらずそれぞれのスタッフが持つ得意分野を見つけて、その点を伸ばせるように一緒に取り組みます
 
すると、それが利用者さんにとって、やりがいになり、働く喜びになるんです。

それはサポートする側としても嬉しいですね。

今、トキハさんやANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパさん、ひょうたん温泉さんなどで、鉄輪本舗の商品を取り扱っていただいています。
 
このような取引先の企業は、障がいのある方々が作っているからという理由だけでは取り扱いしてもらえません。
 
利用者さんが頑張って魅力的な商品を作ったから実現したことだと話すと、次はどんなことが起きるんだろうとワクワクしていますよ。

努力が結果に結びつくと嬉しいですよね。

この喜びはプラスの連鎖を生みます
 
自分が褒められると、一緒に頑張った周りのメンバーも褒めたくなります。今回チャンスがなかったメンバーのために、チャンスを作りたくなります。
 
この繋がりがとても大切だと思っています。

プラスの連鎖は素晴らしいですね。

一生懸命やってたら、一生懸命やっている人が引き寄せられるんです。
 
だからこそ、なぜそれをやっているのか?折れない軸や核心は何か?と、常に自問自答しながら、努力と工夫を続けるしかないですよね。

〈取材・執筆・撮影=林 勇士〉

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  • この記事を書いた人

林 勇士

【合同会社ビジョナリープロジェクト代表/カクシン編集長/社会派WEBライター】大分県中津市出身。1990年生まれ。2013年に大分大学を卒業後に産業廃棄物処理業界に新卒入社。関西、関東での勤務を経て、2018年に合同会社ビジョナリープロジェクトを創業。1年間の東南アジア、ヨーロッパでの海外調査を実施。2019年10月にUターン移住し、デザインの力で「ごみをお金に変えるアップサイクル」事業を中津市で開始。社会起業家のデザイン支援や企業のSDGs支援を行う。

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