企業を取り巻く外部環境の変化のスピードが年々早まっている現代において、変化に対応するための手段として「組織改革」を実行したいと考えている企業が増えています。
しかし、組織改革で成果を出すためには、まずは「人材育成」で成果を出す必要があります。個人が持つ能力を最大限に引き出しつつ、他の社員との調和も求められます。
そこで、大企業での経験を生かして、地方企業の改革に取り組むのがインベステップの宮脇さんです。大企業・地方企業を問わず、組織改革や人材育成の分野で成果を出し続ける宮脇さんの「革新」についてのインタビューをお届けします。

カクシン編集部の林です!僕が聞きました!
リクルート、トイザらス、すかいらーく等を経て地方ホテルの支配人に就任

インベステップを起業して、鉄輪本舗を始めとして色々な企業や店舗への投資やコンサルティングを行うようになるまでの経緯を教えてください。
インベステップを起業する前は、リクルートコスモス、日本トイザらス、スポーツクラブ・ルネサンス、ロッテリア、すかいらーくなどの上場企業を始めとして、7社の企業を経験しました。
起業する直前は、大分市内のあるホテルで支配人をしていました。
なぜ上場企業でのキャリアを辞めて、地方企業に転職しようと思いましたか?
大企業は企業ブランドもありますし、優秀な社員も大勢います。そのような恵まれた環境ではなく、少数精鋭で経営している地方企業で、私個人の実力を測りたいと思いました。
過去の経験の中で、特にどの企業での経験がホテルで生かせると思いましたか?
特に大手ファミレスチェーン店でスーパーバイザーとして、13年間ほどエリア統括や不採算店舗の立て直しをした経験を生かしたいと思いました。
大企業と地方企業の両方で働いて感じた違いを教えてください。
大企業にはそれぞれの専門部署があり、トラブルが発生した際には、本部に連絡したらサポートしてもらえます。ですが、その分、大企業は業務が細分化されているため、1人の社員に任せてもらえる裁量は限定的になることが多いです。
しかし、大企業と比べると、地方企業の事業規模は小さいかもしれませんが、1人の社員に任される役割が大きかったため、私個人としては、大企業にいた時にはない大きな役割を任せていただき、全く新しい経験をすることができました。
40歳で平社員として入社してから5年で支配人に昇格

最初から総支配人として入りましたか?
とんでもないです!今から13年前に私がファミレスチェーンからホテルに入社した時は、40歳・平社員でした。
社長からヘッドハンティングをされて、最初から支配人として入社したんだと思っていました。
ヘッドハンティングではなく、全くのゼロベースでした。今までのキャリアと自社内でのキャリアは別物と見なされて、入社してから実力を見るという雰囲気を感じましたね。
地方企業には独自の文化を持っている企業が多いイメージがあります。
私は型破りなことばかりやっていたので、私のことをよく思っていなかった経営層もいたかもしれません。
型破りなことをする上司は、部下や現場スタッフからは支持されたんじゃないですか?
やっと上の人たちに意見を言ってもらえる人が来たという感じで。
それがそうでもなかったんです(笑)
私が新しいことを提案すると、その都度、現場スタッフからは、まためんどくさいことをやり始めたという雰囲気をひしひしと感じましたね。
同じことを機械的にやり続ける方が楽ですもんね。
はっきり言って四面楚歌でした。上からは煙たがられる、下からは面倒くさがられる、という感じで、孤立無援でした。
それでも結果が出始めたら、少しずつ周りの見る目も変わりましたか?
そうですね。平社員から入ったのが、結果的には良かったと思います。
当時、私は40歳でしたが、10歳以上年下のスタッフから、宴会のセッティングや予約の取り方や、バーカウンターでのドリンクの作り方など、ゼロベースで全て教わりました。
現場の人たちと一緒に働きながら、少しずつ変革を起こして、最終的には支配人を任されました。その過程でスタッフの方々にも信頼していただけるようになったと思っています。
入社から何年で支配人になりましたか?
2年で店長、4年で副支配人、5年で支配人を任せていただきました。
最終的にはどのような結果になりましたか?
業務改善と売上・客数の向上に努めまして、私が支配人に就任して2年半でマイナス収支を損益イーブンの状態まで改善することができました。
ホテルの改革に鍵となるのは「プラスの発想ができる社員」を増やすこと

その雰囲気の中、変革を進めるのは大変ですね。
人間は基本的に思考がネガティブなんですよ。
エジソンも「月明かりだけでは暗くて本が読めない」というネガティブな状況を打破するために、電球を発明しました。
世の中が悪い、時代が悪い、流れが悪い、というのが基本的に人間の発想だと思うんですよ。
そのネガティブな発想から「だったらこうしてみよう!」と変革できる人になるか、「だって仕方ない。。。」と諦める人のままなのか、のどちらかです。
変革を起こせる人を増やすことが「組織変革」や「組織の底上げ」に繋がるということですね!
そうです。
逆境をプラスに転換する発想ができる社員を増やさない限りは、いつまでもチーム力はつかないと思います。
この発想を変えることはとても大変なことですが。
プラスの発想ができる社員を増やすためにどのような工夫をしましたか?
最も効果的なのは、売上や客数などの「数字」を改善して、結果で示すことです。
プラスの発想ができるようにするためには、結果を出して自信をつけてもらうしかないと思います。
具体的にはどのような取り組みをされましたか?
イベントを企画して、ホテルに足を運んでもらうきっかけを作りました。
なぜイベントの企画がプラスの発想ができる社員を増やすことに繋がりますか?
ホテルで働くスタッフの一番のモチベーションは「お客様」なんです。
イベントを通じて新しいお客様に来ていただき、お客様に感動していただくおもてなしをする。
すると、お客様の表情や言葉からスタッフもやりがいを感じて、もっとお客様に喜んでもらいたいと思い、スタッフ自らの接客スキルを上げる努力をするようになります。
売上が上がったと言っても現場で働くスタッフの方々には、あまり実感できないですし、喜びには繋がりにくいですよね。
ただ忙しくなっただけに思えるので、どういうプロセスでお客様が増えて、売上が上がったかを、社員に理解してもらうことが大切です。
社員に「成功体験」を積ませることで社内の雰囲気がガラッと好転

マネジメントする側はその仕組み作りが大切なんですね。
例えば、50人規模のイベントを企画して、結果的に80人のお客様に来ていただき、すごく盛り上がった場合、なぜ良い結果が出たのかをそれぞれのスタッフが考えるんです。
自分の司会進行が良かったのかな?会場設営やテーブルのセッティングが良かったのかな?料理がおいしかったのかな?と色々なプラスの要素が思い浮かびますよね?
「周りのホテルが埋まらない限り、こちらに予約は入りません。」と言った社員がプラスのことを言い始めるんです。すごくないですか?
それはすごいですね!自分も頑張ったからイベントが盛り上がったという自負もありますもんね。
そうなんです。
こうやって社員一人ひとりにやる気の火をつけてあげると、自分にもできるかもしれないと思い始めます。
一度やる気の火がついた社員には、次のステップとして、私のアイディアを出さずに、役割を任せてみるんです。イベントのコンセプトに合わせて、司会進行を任せたり、テーブルのセッティングを任せたりしてみます。
そのイベントがまた成功すると、自分が司会進行中にした工夫が良かったのかもしれない?テーブルセッティングが良かったのかもしれない?という風にどんどん自信がつくんです。
そうなると「あなたのその役割良かったね!」とお互いに褒め合うようになりそうですね。
火がついた社員は、思うような結果が出なくても「やっぱりダメじゃん、、、」と落ち込むのではなく、「ここが悪かったんじゃない?」「もっとこうするべきだった?」という風にマイナスなことではなく、次に繋がるプラスのことを考え始めるんですよ。
一度その考え方をするようになると、その考え方が他の社員にも連鎖していきそうですね。
そのためには、成功することが大切です。
イベントを3、4回と繰り返すうちに、今回は目標に目標に対して何%だったか?前回のイベントに対して単価はアップできたか?コストは下げられたか?というところに着目するようになるんです。
今度は「数字」という観点で、人やお金の流れを分析するステップに入ります。このステップの業務ができるようになった社員は、役職を上げるとさらにやる気を出すようになります。
〈取材・執筆・撮影=林 勇士〉
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